here and there vol.14 Collage Issue

『here and there』
vol.14 Collage Issue

サイズ A4正寸
ページ 64ページ中綴じ
*Author : Nakako Hayashi Art Director : Yuri Suyama*
*Translation : Kenichi Eguchi*
*Publiser Benjamin Sommerhalder*
*Published by Nieves*

林央子さんによるステートメント :
-Collage特集のこと-
スマートフォンで誰とでも即座につながり、いつでもネットショッピングができる。たくさんの情報を瞬時に得ることができ、欲望を満たすことが容易になったいま、「何に価値を置くか?」が問われる時代になってきている。

また、人が「つくる」ことの大部分を機械に委ね、安価な品物を大量に生産する方向に向かっているなかで、「つくる」ことの価値を再考する時がきているのではないだろうか。こうした風潮にあらがうように、さまざまな場所で、真摯な姿勢で「つくる」行為が実践されていることに、私は価値を置きたいと思って、この特集を思い立ちました。

2018年5月。満月の夜に、エレン・フライスからメールが届いた。「日本に行くことにした」と。その5ヶ月後の、2018年10月。娘のクラリッサと2人、5年ぶりの日本への旅で、彼女は「Disappearing」展を開催した。長年の友人関係にある前田征紀率いるCenter for Cosmic Wonderで。

写真と服。
私とは30年近い交友関係になるエレンにとって、その二つはいつも、感情をかきたてられる大切なものであった。けれども彼女は、すべてを良しとするわけではなく、選び抜かれたものを好む人である。
10年前に住み慣れたパリを離れ、南西仏の村に移り住んだ彼女は、蚤の市で山積みにされ、廃棄されたも同然の状態で安価に売られている服の山から、琴線に触れる服を探し出すようになった。暮らしのなかで、薬草を手で摘むことを日課にするようになったのと同様に、あたかも、自分だけの宝さがしのようにして。そんな行為が習慣となった彼女の、現在の暮らしぶりに端を発して、この特集は生まれた。

私が提案と現実化に奔走した「Disappearing」展は、オルタナティブな表現空間であるCenter for Cosmic Wonderにおいて2018年10月、9日間開催された。最近エレンが撮っている村の風景のポラロイドを並べ、過去に彼女が撮ってきたイメージを壁にコラージュした。パリという都市生活の中でキュレーターや編集者として、そして南西仏の村落に移り住んでからは、母親として。節々で自らの人生を舵とってきた彼女が、セピア色に変換させたプリントを自由に繋げ合うことで、思い出の数々の瞬間を切り離し、新たに結合させた。この展示はセラピー的な行為だった、とエレンは語った。

Autre Temps
エレンが買い付けて日本に送り、CosmicWonderが墨色に染めた服は、フランス語でAutre Temps(別の時代)と名付けられた。そのAutre Tempsの画像をつかって「Disappearing」展の告知をしていたある日、嬉しい驚きがおとずれた。私のインスタグラムに、LAに住むミランダ・ジュライが「I really, really, need to wear this blouse!」(どうしても、このブラウスを着なくっちゃ!)という言葉を寄せてくれたのだ。

エレンが価値を置いたものに、私やCosmicWonderが価値を置き、それをSNS上で見つけたミランダ・ジュライが、再び価値を置く。その循環は、1990年代に私たちが実感していた「サークル感」、同じものに価値を置くもの同士がつながり、興味をシェアし、共感しながら生きる感覚を思い出させてくれた。

「Disappering」展から半年後の2019年春、私は9日間しか展示されなかったこのプロジェクトを『here and there』の誌面で再現することを決めた。スーザン・チャンチオロ、木村友紀、志村信裕、安野谷昌穂など、エレン・フライスやCosmicWonderと同じサークルにいるアーティストたちが、Autre Tempsの服を着たところを、撮影してもらう。彼らが撮ってほしいと思う、写真家たちの手をかりて。このようなファッション写真のつくりかたを試みたのも、東京都写真美術館で2020年春から始まる「写真とファッション」展の監修に、私が誘われたことが大きかった。自撮りの時代において、撮り手と被写体が向き合って、ひとつのイメージをつくる作業の美しさに光をあてたい、と思ったのだ。これらのイメージは、上記の展覧会(「写真とファッション」3/3~5/10)の『here and there』のインスタレーションの中で展示される。

居相大輝
1991年生まれの居相大輝は、妻と2歳半の娘とともに、自身の生まれ故郷に近い京都・福知山の山村で「iai」の服づくりをおこなう。山羊を飼い、畑を耕しながら服を縫い、小川の傍らで、草木染めや泥染を楽しむ日々。うたうように、笑うように、自然ないとなみとして、一着一着、服をつむぎ出す。消防士として上京していた
20歳のころに東日本大震災を体験し、仕事で被災地に赴いたとき、自然の力ですべての構築物が流されてしまった風景を見て「自分の手で、一から、つくり上げてみたい。自分たちの住処も、食べるものも、暮らしも」という強い思いが湧き上がってきた、と話す。

Pugment
1990年生まれの2人組、今福華凛と大谷将弘が2014年に結成したPUGMENTはこう語る。「美大生だったころ、僕たちが今、ISのようなおそろしいテロリストの組織に対抗していくためには、想像力で立ち向かうしかないのではないか?という思いを抱いたんです」。彼らはグラフィックデザイナー、音響アーティスト、ファッションを愛好する大学生のサークルメンバーなど多数の若者の主体的な関与をさそいながら、トップダウンのヒエラルキーをとらない水平的構造の、クリエイティブな集団であろうと志す。結成から5年後の2019年には、恵比寿のアートブックショップNadiffの上の階に、ギャラリースペースPeopleを開設。また美術館、ギャラリー、ブティックや書店など、都市のプラットフォームを精力的に活用しながら、活動を拡げている。対話型の制作をつづける彼らからは、現在進行形のリサーチ兼制作プロセスのコラージュ作品を寄稿してもらった。

Purple Party
1993年からパリコレ取材を始めた私は、1992年秋にエレン・フライスとオリヴィエ・ザームの2人が創刊した『Purple』誌に多大なインスピレーションを受けた。文化の交差点としての雑誌であり、自由な発言のメディアであった『Purple』の存在によって、パリは次第に、人と人が出会う刺激にみちた場に変容していった。その過程をみていた私は、当時『花椿』の編集者として、『Purple』が主宰するパーティーの一夜を、エレンを通して写真家のマウリシオ・ギジェンに撮影を依頼していた。撮影を行った1997年当時から20年以上たったある日、東京の自宅で部屋を片付けていたら、その時のアルバムが出てきた。そこに写っている写真をみて、90年代のファッションシーンにあふれていた顔ぶれと、その場に溢れている「サークル感」を、私は懐かしく思い出していた。

志村信裕
2年間のフランス滞在から戻ったアーティストの志村信裕は、2019年初頭に二つの展示を行った。一つはエレン・フライスが住む村で撮影を開始した、羊をめぐる冒険というべき壮大な,長編映像作品「Nostalgia,Amnesia」の発表。もう一つはユカツルノギャラリーで開催された「Land」展で、ここでは「Nostalgia, Amnesia」のスピンオフとして生まれた、羊にまつわる映像作品や写真、ドローイングなどを展示していた。その中で、志村の私物と文章を組み合わせた「Artifactsabout sheep」(2017-)の展示が、するどく心にささった。これは、新作映像制作中に志村が手に入れた私物についての、あたかも雑誌のコラムを立体化したような展示だった。その展示物は、非売品であった。このような展示をコマーシャルギャラリーでの展示空間に含めた志村の行為の批評性が、強く響いた。最近、自身の作品について執筆行為を始めた彼に、「Land」展やエレンとの出会いについて、彼の言葉で語ってもらった。

自分のなかからわきあがる、「つくりたい」という真摯な気持ちに出会うこと。さまざまな課題を抱える社会のなかで「つくりながら生きる」ことにより、自分なりの抵抗を示すこと。「つくる」行為のさきにいる、それが届く先にいる人を思う気持ち。そうした体験や感情が、ますます貴重なものになっている時代なのではないでしょうか。

そんな気持ちからこの特集が生まれました。

楽しんでいただければ幸いです。

2020年2月 林央子

主な掲載写真 :
・「eleinfleis」
エレン・フライスによる写真(一部は、Cosmic Wonderで行われた展覧会に出品したもの)

・「nobuhiroshimura」
志村信裕さんの写真作品(紙面ではエッセイと込みのもの)

・「Autre Temps by YukinoriMaeda」
エレンとCosmicの前田さんのプロジェクト“Autre Temps”を前田さん自身が撮影したもの

・「eleinfleis by laetitiabenat」、「masahoanotani by kyojitakahashi」、「mirandajuly
by mikemills」
古着を墨で染めた“Autre Temps”を、アーティストが着て、それを誰かに撮影してもらうプロジェクトより

レティシア・ベナが撮影したエレン、高橋恭司が撮影した安野谷昌穂、マイク・ミルズが撮影したミランダ・ジュライ

¥ 1,980

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