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かぐや姫 × 森見登美彦!
「物語の原型」、誰もが知る、かぐや姫と5人の求婚者、帝が繰り広げる異世界譚を、「まるで僕が書いたような物語」と語る大人気作家が敬意をこめて抱腹絶倒・大胆不敵に新訳した画期的必読古典。
1000年以上も読み継がれる「物語の原型」を
竹林をこよなく愛す当代の人気作家が現代語訳!
翁がある日、光る竹の中に見つけた可愛らしい小さな人。やがて絶世の美女に成長したかぐや姫は、言い寄る求婚者たちに無理難題を課す。恋に破れ去る男たち、そして、「その日」は近づく――千年以上も前に書かれ、読み継がれてきた異世界譚を、竹林に並々ならぬ思いを寄せる作家・森見登美彦が現代語訳した必読の一冊!
竹取物語とその現代語訳にまつわる舞台裏をたっぷり語った講義「作家と楽しむ古典 僕が書いたような物語」、竹林の中へ入り込んだ幼少期の原体験からはじまる文庫版のための書き下ろしあとがき「生きていることのふしぎ」も収録。
【全集版あとがき「千年の失恋」】
今から千年以上も前のこと。月光を浴びて清らかに輝く竹林を見て、昔の人は確信したのだ。この竹林の奥深くは神秘的な月の世界へ通じている、と。
その原作者(たち)を他人とは到底思えない。
『竹取物語』はファンタジーであり、竹にまつわる物語であり、残酷な美女の物語であり、阿呆(あほう)な男たちが右往左往する物語であり、片想いがことごとく破れていくローテーション失恋の物語である。私はファンタジーの新人賞でデビューし、大学院生時代の研究テーマは竹であり、残酷な美女が登場する小説も書いたし、阿呆な男たちが右往左往する小説も書いたし、いろいろな失恋や片想いを書いた。「ものがたりのいできはじめのおや」に対して畏れ多いが、まるで自分がこしらえたような物語だと、つねづね思っていたのである。もちろん、だからといってスラスラ訳せるわけではまったくないが。
現代語訳の方針としては、
一、原文にない事柄はできるだけ補わない
二、現代的な表現を無理して使わない
という二点を決めて臨んだ。
そうしないと暴走して、原典から遠く離れてしまいそうだったからである。
和歌の扱いについてはとくに悩んだ。男女が感情をこめてやりとりするラブレターだから、訳して意味が通るというだけでは物足りない。いかにもその人が詠んだという風であってほしいし、物語の流れにちゃんと溶けこんでいてほしい。あれこれ考えた末、「恋する男女が交わす、ちょっと恥ずかしいポエム」的なものをイメージして現代語訳した。そういうわけで、いささか阿呆っぽくなりすぎたところもあるかもしれない。
『竹取物語』において、原作者がのびのびと楽しく書いていると思われるのは、五人の求婚者のエピソードである。細部に注ぐ情熱が、ほかの部分とはいささか異なって感じられるのだ。身のまわりの貴族社会での見聞を書きこんだにちがいなく、こまごまとしたリアリティと大胆な幻想が絶妙の塩梅(あんばい)で入り混じっている。五人の求婚者たちの阿呆ぶりが生き生きと描かれていればこそ、高嶺(たかね)の花たるかぐや姫の情け容赦のなさも際立つ。そうでなくてはいけない。
これら五人の求婚者のエピソードでは、原作者が「笑わせてやろう」と腕まくりをしている。その笑いの源は求婚者たちのキャラクターにある。「秀才馬鹿」型や「世間知らずのボンボン」型、「オレ様最強」型など、求婚者たちには明確な個性があり、その人らしい手法をもって、かぐや姫から与えられた難題に挑む。その人らしい悪だくみが、その人らしく失敗するからこそ面白いのだ。そういうわけで、現代語訳にも彼らの個性が分かりやすく出るように努めた。平安時代の読者たちは彼らの阿呆ぶりに笑い転げたにちがいないし、現代の読者にもせめて「ニヤリ」としていただければ嬉しい。
しかしついに帝(みかど)が登場するとき、こういった陽気さは影をひそめてしまう。
この物語における帝というのは、現世のルールそのものを体現した存在で、いわば地球代表選手である。それに対して、かぐや姫は現世のルールが通じない「向こう側」の世界の代表選手である。かぐや姫が帝さえも引きずりだしたとき、物語の水温は変わって、悲しい結末の予感が漂い始める。『竹取物語』は、地上に降り立ったかぐや姫が、あたかもトーナメント戦を勝ち抜くかのように、現世のルールを次々に打ち破り、最終的には地球を丸ごと失恋させる物語だといえる。その失恋の余韻は、千年以上も尾を引いたわけだ。
当時生きていたすべての人間が消え去っても、天と地がその姿を変えることはない。この世ならざる世界への怖れや憧れは引き継がれていく。
「その煙、いまだ雲の中へ立ちのぼるとぞ、いひ伝へたる」
この最後の一節の美しさたるや。
現代語訳を終えたあとでは、とりわけそう思うのである。
文庫/並製/144ページ
【著者】
森見 登美彦 (モリミ トミヒコ)
2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞、10年『ペンギンハイウェイ』で日本SF大賞。近刊『シャーロック・ホームズの凱旋』。
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