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【サイン本】十三の物語

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『十三の物語』
スティーヴン・ミルハウザー / 柴田元幸 訳
※柴田元幸さんのサイン入りです。

四六判、296ページ

匠の技巧が発揮された傑作短篇集

 「猫と鼠」猫が鼠を台所で追いかけている。鼠はフロアランプを避けるべく二つに分裂し、猫は壁に激突、アコーディオンのように体がひだひだに折りたたまれ、そこから音楽が流れでる。猫は鼠との追いかけっこ、知恵比べで絶対に勝てないと分かっていながら、鼠を捕まえたい欲求がつのるばかり……鼠が赤いハンカチで猫の体を拭きとり、鼠も自らを拭きとりはじめ……。
 アニメ『トムとジェリー』の楽しいドタバタを想起させるが、こうしてミルハウザーの手にかかると、息もつかせぬ速い展開と、細部にわたる滑稽かつ残酷な描写に翻弄されてしまう。とうていありえない状況にもかかわらず、「ミルハウザーの世界」に一気に読者を引き込む描写は、さらに凄みを増している。
 ほかにも、周囲から無視しつづけられた少女の体が文字通り消える「屋根裏部屋」、バベルの塔をめぐるパロディ「塔」、森の向こうにある町への憧憬「もうひとつの町」、エジソンの助手による偽の日記「ウェストオレンジの魔術師」など。「オープニング漫画」、「消滅芸」、「ありえない建築」、「異端の歴史」の4部構成で、13篇を収録。

スティーヴン・ミルハウザー
1943年、ニューヨーク生まれ。アメリカの作家。1972年『エドウィン・マルハウス』でデビュー。『マーティン・ドレスラーの夢』で1996年ピュリツァー賞を受賞。邦訳に『イン・ザ・ペニー・アーケード』『バーナム博物館』『三つの小さな王国』『ナイフ投げ師』(1998年、表題作でO・ヘンリー賞を受賞)、『ある夢想者の肖像』、『魔法の夜』がある。(以上、白水社刊)ほかにFrom the Realm of Morpheus 、We Others: New and Selected Stories(2012年、優れた短篇集に与えられる「ストーリー・プライズ」を受賞)、Voices in the Night がある。

柴田元幸(シバタモトユキ)
1954年生まれ。米文学者・東京大学特任教授・翻訳家。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベック、スティーヴ・エリクソン、レベッカ・ブラウン、バリー・ユアグロー、トマス・ピンチョン、マーク・トウェイン、ジャック・ロンドンなど翻訳多数。『生半可な学者』で講談社エッセイ賞、『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞、『メイスン&ディクスン』で日本翻訳文化賞受賞。

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