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角田光代『これからはあるくのだ』

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私中川が書いた過去のブログより

この本が唯々好きだ。
角田光代『これからは歩くのだ』

飲みながらこれを書いているのではない、念のため。
どうしてこの本を手に取ったのかわからない。
タイトルに惹かれたのか?
装丁が気になったのかもしれない。
ちなみに装丁はK2にもいた池田進吾。
(単行本の方はさらにいい!)
とにかく何かに反応して読んでみた。

誰もが経験するような日常を描いた31のエッセイだが、やはり文章がうまい。
最初に手に取った時、目次を見ると「ケンビシ」が目に飛び込んできた。
十数年後の「ケンビシ」

ケンビシはあの剣菱?
若い方は剣菱を知らないかもしれないが、私のような還暦も近いおっさんにとって剣菱は菊正宗とともに魔法のコトバである。
地酒なる言葉なぞない学生時代、味もわからないのに旨口なのか辛口なのか知らないけれどとにかく剣菱や菊正宗を飲んでいると、それは通の証だった。O関やG桂冠よりこころもち価格が高かったような気がする。特に剣菱はマークが明確でかっこよかった。
その剣菱がケンビシなのか?
読み進むと果たしてあの剣菱であった。
内容は秘すが私は腹を抱えて笑った。
ぜひ読んで欲しい。

この話だけでこの本が大好き。
爾来この本を他人に勧めまくっている。
嫁はんと三女に読ませた。
勿論大笑い。
そういえば小倉ヒラクくんにも勧めた。それ以来ヒラクくんは角田光代ファンになり何冊か購入したと彼の奥さんから聞いた。

そのヒラクくんが灘や伏見の酒蔵の凄さを先日飲んだ時に語り出した。所謂地酒ではない石高の大きな酒造メーカーの話で、剣菱もその中に入っていた。私は酔いもあり彼の言っていることを完全に理解したわけではなかったが、あの今をときめく発酵デザイナー(しかしこの肩書ってなんやねん!?)の小倉ヒラクの発言なのでとても印象的だった。とにかく剣菱はブレンド技術が凄いのである。高名なシャンペン・ドンペリニョンのマスターブレンダーも剣菱の社長に話を聞きに来たらしい。

それから1週間も経たないうちにみそラーメン屋さんから飲み会の案内が来たので豊中までのこのこ出かけると、なんとそこに剣菱の白樫社長がいた。秋鹿の航太郎さんもいて楽しいひと時だった。

で、この本をご存じないだろうと思い、贈ることにした。スタンダードブックストアを閉めているので、本屋で探すことにしたがどこにもない。自宅の近所にも天王寺にも。どの本屋も文春文庫の角田光代の棚にはほとんど同じ銘柄の本が並んでいるので合点がいった。ランクの高いものしか置いていないということ。出版社は売行きに応じてランクを付ける(S,A,B,C,D,E...くらいかな?)。この本が棚にないということは残念ながらランクが低いということである。探すのをあきらめて友人の本屋で取り寄せ今日受け取ってきた次第。

角田さんの他の著書よりは人気がないということになってしまうが、(本屋が出版社で決めたランクで選書するとよっぽどのことがない限り低ランクの本には出合えなくなる)ケンビシだけでなくどれを読んでも面白いので本当にオススメ!文庫なのでお手軽!

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